衣替えの時期に思い出すこと
物心ついたころから、衣替えの季節になると、心の中で、本当のお母さんが迎えに来た時に持って行くお洋服を決めていた。
下着3枚 シャツ3枚 ズボンはコレとスカートはコレ。というように5分ほどで身の回りの物をパッキングできるように何度も頭の中でシュミレーションしていた。おもちゃなども本当は持って行きたかったが、パッキングに手間取って本当のお母さんに置いてきぼりにされるのは まっぴらごめん だから、持って行くのは身の回りの最小限の物にとどめた。
この家に居ないと、どんなに嫌なことをされてもここに居ないと 私がどこにいるのか本当のお母さんにわからなくなるから、迎えに来てもらえなくなる。それまでは、この人を『お母さん』と呼んで好きなふりをするしかない。でも、どんなに待っても本当のお母さんは迎えに来てくれなかった。
家にいるのがとてもつらくなり、5~6歳の頃に 何度か家出をしたが、やはり本当のお母さんが迎えに来るかもしれないと思うと、重い足を引きずりながら帰宅した。帰宅すると母親は勝ち誇ったように、
「やっぱり お母さんが一番いいでしょ。」と言った。その度に心の中で、
『違う!アンタは仮のお母さん。本当のお母さんじゃない』と叫んだが、所詮小さな子供なので、自分一人で生きていくこともできないので、耐えるしかない。
ある程度の年齢になり、戸籍などの閲覧ができることを知り、市役所へ行って閲覧した。どうやら、あの鬼のような人が、私の母親という事がわかり、とてもショックを受けた。
とにかく、逃げ出せるような年齢になるまでは、機嫌を損なわぬよう、おとなしくしておくしかない。
逃げ出せるその日まで 耐えることにした。
もし、DNA鑑定して親子という結果だったら・・・
おぞましい。考えただけで、倒れそうだ。